企業が一つの高価なソフトにお金を一度つぎ込んでしまったら、他のものに替えることはまずないと思ってよい。ジャパンタイムズのデジタル事業に携わっていたとき、古くからの新聞編集システムが独占的なソフトウエアのエコシステムを築き、新聞社を囲い込んでいるのを目の当たりにした。インターネット上の全てのものが相互の互換性を推進している今、この戦いに勝とうと思っても難しいのが現状だ。
アップバーターもプロットリーも、企業にとって脅威となるまでにはまだ長い道のりがある。法人市場で信用性を高めるのは容易ではない。そこで、法人市場に進出できることを証明するために、アップバーターには資金調達が必要だった。そして、もし法人市場で一定の成果が出れば、アップバーターは長期的にこの市場にとどまる意思を法人顧客に示すために、今回よりもずっと規模の大きい資金調達ラウンドを成功させなければならない。
余談だが、ファイル共有サービスの「Box(ボックス)」がIPO(新規株式公開)に踏み切ったのもそのためだった。
文:イジョビ・ヌウェア
訳:堀まどか
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【プロフィル】Ejovi Nuwere
イジョビ・ヌウェア ニューヨーク生まれ。全米最大の無線LAN共有サービスFON創業者のひとり。ビジネスウイーク誌により「25人のトップ起業家」に選出される。2008年に日本でオンラインマーケティングに特化したランドラッシュグループ株式会社を設立し、現最高経営責任者(CEO)。