握手を交わすシナプティクスのリック・バーグマン社長(右)とルネサスエスピードライバの工藤郁夫社長=11日、東京都千代田区【拡大】
経営再建中のルネサスエレクトロニクスは11日、液晶用半導体子会社のルネサスエスピードライバ(東京都小平市)を米シナプティクスに売却することで合意したと発表した。売却額は約485億円。シナプティクスはタッチパネル用部品などに強く、エスピードライバを買収することで、開発力や製品ラインアップを強化する狙いがある。
ルネサスは自動車や産業機器向けの半導体に集中して収益改善を図る考えで、エスピードライバの売却先を探していた。
エスピードライバはスマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末向けの液晶用半導体を得意とする。米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」の部品も手がけ、業績は好調だった。売却先として、アップルも候補に浮上したが、価格面などで折り合わなかったもようだ。
エスピードライバの株式はルネサスが55%、シャープが25%、台湾の半導体メーカーが20%保有する。2014年10~12月期にも、シナプティクスへの株式譲渡を完了させる見通しだ。
シナプティクスはタッチパネル部品や指紋センサーなどに強みを持つ。エスピードライバの技術を取り込み、タッチパネル向けと液晶向けを一体化した部品などを開発する。
シナプティクスのリック・バーグマン社長は会見で「業界リーダーの2社が手を組むことで、成長が加速する」と強調。エスピードライバの工藤郁夫社長も「(シナプティクスは)一番シナジーが生かせる会社であり、技術や市場には大きな可能性がある」と述べた。
エスピードライバの約350人の従業員については、人員削減は行わず、雇用を継続する方針だ。