◆木桶復活で魅力再び
強度や年輪の細かさのほかに、吉野杉の特徴として挙げられるのは、「ほどよい香り」と淡い桜色をした独特の色味だ。明治時代までの約200年間、吉野地方の主力だった酒だるに使われたのもそのためという。
石橋専務は異業種とタッグを組むことで吉野杉の良さを広めようと、近年見かけることもほぼなくなった吉野杉の木桶を復活させ、地元の酒蔵で日本酒を製造することを発案。2011年2月、樹齢100年ほどの杉の木桶で仕込んだ「百年杉」の製造に成功した。
木桶職人からは木のあくや色、香りなどが課題と指摘され、「3年間は商品化できないと思ってつくりや」と言われていたが、出来上がった1年目の酒は「ほのかな木の香りがあるいい味わいの酒」(石橋専務)だったという。
「他の木材と違う、吉野杉の良さを実感できる成果だった。日本人の木の文化が伝わる商品ができたことで、これまで忘れられそうになっていた木桶やたるにスポットが当たり、徐々に広まるきっかけになった」と石橋専務。「百年杉」を契機に、小豆島の老舗醤油(しょうゆ)蔵や、兵庫の醤油蔵からも依頼を受けるようになった。
石橋専務は「木は自然のものだから変形するようなマイナス面もあるが、それ以上の良さがある。もっと一般の人が足を運べるように工夫するなど、魅力を伝えていきたい」と、さらに挑戦を続ける考えだ。 (山崎成葉)
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【会社概要】吉野中央木材
▽本社=奈良県吉野町橋屋57((電)0746・32・2181)
▽創業=1946年2月
▽資本金=1000万円
▽従業員=14人
▽事業内容=住宅などの建築用木材の製材・加工・販売
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