≪インタビュー≫
□石橋輝一専務
■製材から加工まで工程アピール
--吉野杉の面白さに気づいたきっかけは
「大阪や東京では、身の回りにあまり木がない生活を送っていた。地元に帰って『ほんまもん』に触れたとき、その力や自然のものが持つ個性といった面白さに気づかされた」
--自然の木を扱う難しさは
「丸太は人と一緒で、1本として同じものはない。どういう製品にするかを見極め、製材する中で出る木の癖をみて、“引き算”しながら質を上げていかなければならない。同じ寸法の仕上がりでも、それぞれの木の持ち味をいかに生かすかが難しい」
--最近の需要の傾向は
「都市部の会社のオフィスの内装を木でつくりたい、という依頼が増えている。かつてはほぼ住宅だったが、最近は約8割が住宅用部材で、1割はそういう仕事。都会では自然を身近に感じることが少ないからでは」
--吉野杉やヒノキの魅力を発信する取り組みは
「5年ほど前から、吉野地方の製材所や林業家、大阪の設計士などで『山林ツアー』という実際の製材の工程など見て知ってもらうイベントを開いたり、今年5月からは月1回『離れ』を使って工場見学した人に吉野の茶菓を楽しんでもらう『ほまれきっさ』も企画している。一般の人だけでなく、設計士や工務店からも反応があり、『ものづくりをまじめにやっている』と信用されて仕事につながることもある」
--今後の目標は
「林業はもうかっている産業ではない。若い人が携わることも少しずつ増えてきているが、生活が成り立ちにくい課題もある。いかに良質な吉野の素材を生かした製品作りをしているか、工程を知ってもらって付加価値を高める。そうした製品を多くの人に使ってもらうことで、原木丸太の仕入れを1円でも高くし、最終的に山にお金を戻していきたい」
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