卓球は、だれもが気軽に親しめて、人と人とが心をかよいあわせる交流にぴったりのスポーツだ。大震災に打ちひしがれ、悲しみに沈む被災地の人たちにとっても、卓球台をはさんでボールを打ち合うことは、いくらかでも悲しみや不安を和らげるものとなった。福島県桑折町の桑折駅前に設けられた浪江町の応急仮設住宅では、卓球を楽しんだ後の閉会式で自治会長が「除染が進まないが、故郷にいつか帰りたい」と涙ながらに話した。その後、仮設住宅からは「カラオケは週1回だけど、卓球は毎日やっているよ」とうれしい話が届いた。
◆トップクラス6選手参加
この支援には、国内トップクラスの6人の選手を擁する男子卓球部ももちろん積極的に参加した。岩手県岩泉町での交流会には、子供から80歳を超すお年寄りまで170人が集まった。会場には、6人の選手のうち下山隆敬主将ら3人が駆けつけ、模範演技や選手とのラリー、チャレンジマッチで大いに盛り上げた。
佐藤監督は「集会所に卓球台を置いて、ボールを打ち合っていると1時間もしないうちにみなさん和気あいあいとなって、笑顔が戻るんです。体を動かすだけで、つらい思いを一時でも忘れてもらえれば、という気持ちでした」と語る。
福島県飯舘村では、村民たちは福島市や同県相馬市などの仮設住宅に分散を余儀なくされた。村の年中行事だった「思いやり・までい(真手=心をこめて)ラリーピンポン交流会」も中断になった。その大会が卓球支援をきっかけに復活した。1回目は2012年12月。福島市の県青少年会館に、分散していた仮設住宅から巡回バスで約200人が集まった。中学生らは選手たちの指導を受けながら交流、村の人たちは再会を喜び合う「長いラリー」を楽しんだ。離れ離れを強いられた村民たちが一堂に集まる貴重な機会となった。