三つどもえの構図
トヨタは、11年3月に発生した東日本大震災で生産・販売が落ち込む事態に見舞われた。このため、その後は「短期の業績に一喜一憂しない」(豊田章男社長)方針のもと、1ドル=85円、年間生産台数750万台になっても利益が出る体質を地道に構築。1000万台近い生産が、好業績を続ける原動力となっている。
ただ1000万台レベルの生産を続けることはリスクも伴う。世界販売の3分の1を占める北米市場のみならず、政治リスクが常につきまとう中国、独勢の本拠地である欧州市場でもコンスタントに販売しないと維持できない生産規模だからだ。特に欧州市場では苦戦続きで、4~6月期は販売台数を伸ばしたとはいえ、売上高営業利益率はわずか1.7%しかない。
この構図はVWも同じで、同社はアジア販売の9割を担う中国に販売、利益とも依存。トヨタが得意な北米や東南アジアに足がかりを築きたいが、現状ではインドを含め足踏み状態が続く。
トヨタ幹部は「今後は米ゼネラルモーターズ(GM)も含めVW、トヨタの三つどもえの構図が当面続く」とするが、販売競争が激化する新興国では、ブランド力で欧州勢に分があるのも事実。市場に適した魅力ある車を効率的に投入できるかが、トヨタの浮沈の鍵を握るといえそうだ。(飯田耕司、田辺裕晶)