だが、市販するには大きな課題があった。スパンレースは、吸着性能を高めると強度が弱くなり、破れやすいという欠点があったのだ。立体構造にするというアイデアもあったが、当時の製造技術ではコストがかかり採算が合わない。
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そんな中、開発者の一人が入浴中、格子状に並ぶ浴室のタイルを見て、「目の粗い格子状のネットに不織布を絡ませたら」というアイデアがひらめいた。そして、格子状のポリプロピレン製ネットにスパンレースを絡ませたシートの原型が誕生したのだ。
このシートを使い、掃除しやすい製品を完成させるためにも試行錯誤した。取っ手とシートをマジックテープでとめる方法など、いくつかの方法が候補に挙がったが、いずれもぴったりしない。
この苦境を助けたのは、結婚退職した元花王の女性社員だった。かつて開発部門にいたことがあり、彼女を再び開発チームに起用し、主婦の目線からアイデアを出してもらったのだ。「片手で楽々操作できる」「テレビ台の下の隙間も掃除できる」など、簡単に掃除ができるためのヒントが次々と浮かんだ。開発チームは、取っ手にアルミパイプを採用したり、シートを装着するヘッドの厚さをなるべく薄くしたりするなど工夫を重ねた。こうして92年、ようやく納得できる試作品ができあがった。
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最後の関門は、社長や役員による“試験”だった。当時、役員宅の多くはカーペット敷きで、開発担当者が想定していたフローリングの床はほとんどない。そこで、建て替えたばかりの研究所長宅のフローリング床で試作品を使っている様子をビデオ撮影し、社長らに商品化の許可をもらった。