ゴーンは今年4月、仏ルノーCEOに再任された。今後4年間はグループを指揮する立場となり、ゴーン自身も任期満了まで務める意向だ。野心的な幹部が「トップになれないなら辞める」と判断しても不思議ではない。誰もが志賀のような、番頭に徹するナンバー2となれるわけではないからだ。
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こうした現状を、志賀はどう見ているのか。
「ゴーンに鍛えられた外国人幹部は、欧米自動車メーカーにとって望ましい人材だ。日産は『草刈り場』になっている」
こう言ってゴーンの立場を擁護する。パーマーだけでなく、キャデラック社長に移籍したヨハン・ダ・ネイシン、米電気自動車(EV)メーカー、テスラ・モーターズに移籍したサイモン・スプロールらは、いずれも他社から転職してきた人材だ。
現在、役員(執行役員含む)50人のうち外国人は17人だが、うち2人は米ゼネラルモーターズ(GM)と独フォルクスワーゲン(VW)からの転職組だ。志賀は「日産は海外から(転籍を繰り返す)プロ経営者をヘッドハントで集めてきている会社」だと説明した。
かつてゴーン自身も、米自動車大手からヘッドハントを受けたことがあるという。日産再建の手腕を買われた2005年ごろだ。結局、ゴーンは断った。その後、米自動車大手は25億円を超える年俸で、別の人材をトップに据えた。
「日産・ルノー連合を優先して断ってくれたのだろう」と志賀はゴーンの思いを代弁する。辞めた役員や幹部の決断にも一定の配慮を示すと同時に、国内トップクラスの高額報酬を得るゴーンをさりげなく擁護するのは、長年、カリスマを支えた番頭ならではの対応だ。