変化が起きたのは2012年。訴状や証拠資料、島野側の主張によると、アップルがピンの増産を求めてきたため、設備拡充や2次サプライヤーとの増産体制の調整を急いで進めた。しかし、増産体制を整えるやいなや、アップルはピンの発注量を減らしてきたという。
島野はアップルに、(1)他のサプライヤーからもピンの供給を受ける(2)島野と取引している2次サプライヤーと取引する-場合、それを島野に知らせるという約束をさせていた。島野にとって、アップルとの取引は極めて重要で、発注量の減少は死活問題だ。またピンをつくるためにノウハウを伝える2次サプライヤーに、間接的に自社の技術を使われては「オンリーワン」の技術を維持できない。この約束は、巨大企業と取引する島野が自社や取引先を守るための知恵だった。
しかしアップルはこのとき、島野の2次サプライヤーである海外企業にピンをつくらせており、両方の約束を同時に破っていた。その上、その会社は島野の特許権を侵害していたとされる。