特に外国人観光客に人気が高い。森泰藏社長は「はっきりした数字ではないが、100万人のうち、約20万人が海外から。うち7万人は台湾からのお客さまで、それ以外が香港や韓国、シンガポール、マレーシア、欧米とみられる」と話す。
今年度も100万人を超えるのは確実で、利用者数は大雨で2日間運休した8月を除き、各月で前年同月を上回っている。「円安の影響で、海外のみならず日本の観光客が9、10、11月に増えた。海外へ行くより『京都へ行こう』という人が増えていると思う」と森社長はいう。
◆アイデアふんだんに
トロッコ列車の人気の裏側には、社員らの努力やアイデアも随所に盛り込まれている。
沿線で紅葉の見どころや景観の良いポイントでは、徐行運転するほか、社員が扮(ふん)した伝説の鬼「酒呑童子」が車内で記念写真に応じるなど、乗客へのサービス精神を優先する。
駅売店でコーヒーを注文すると、「嵯峨野」のロゴが入ったプラスチック製のカップにコーヒーを注いでくれ、「記念に持ち帰ってください」と、ポリ袋を一緒に渡してくれる。
「社員旅行でスペインに行き、列車に乗ったときに受けたサービス。社員のアイデアで自社でも実施することになった」(坂口さん)
シーズンオフの1、2月は運休し、車両の点検や、枕木の取り換えなどのメンテナンスのほか、次年度の開業に向けた営業活動に充てている。
森社長は「観光鉄道とはいえ、お客さまの命を預かっているのは何ら変わらない。安全確保が最優先」としたうえで、「嵯峨・嵐山や亀岡など沿線の資源をお借りする形で商売しているのはありがたいこと。地域の人たちにどう恩を返していくのかが課題」と話している。(塩山敏之)
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