東芝は今春、府中事業所(東京都府中市)に「水素エネルギー研究開発センター」を設置し、次世代エネルギーとしての水素関連技術の開発や検証を加速させる。田中久雄社長は「クリーンなエネルギーを使う水素社会に向けた一歩だ」と話す。
一方、川崎重工業は水素を大量に輸送・貯蔵する「水素液化システム」などの開発を推進。昨年11月に播磨工場(兵庫県播磨町)で水素液化プラントの試験操業を始めた。同工場は1日当たり約5トンの水素を液化する能力がある。高速回転機械の開発で培ったタービン技術などを活用。圧縮した水素ガスを、冷凍サイクルで冷やされた水素と熱交換しながら冷却することで、液化水素を製造する。
村山滋社長は「本当に必要になるのは10年以上後かもしれないが、日本のために、今のうちに水素を海外から運んでくる技術を磨いている」と語る。
水素の本格普及は緒に就いたばかりだが、FCVが街を走り出すことで水素社会への移行が静かながらも力強く動き出す。(田辺裕晶、大柳聡庸、高橋寛次)