ホンダの伊東孝紳社長は「世界販売600万台」を掲げ、拡大路線を推し進めてきた。突然の辞意表明はその結果として品質管理の脇が甘くなり、主力小型車「フィット」の相次ぐリコール(回収・無償修理)などでブランドの信頼をおとしめた責任を取った側面がある。新体制のもと出直しを図るホンダだが、経営規模の拡大と品質管理の両立をどう果たすのか、課題は大きい。
一昨年から計5回に及んだフィットなどのリコールを受け、ホンダは開発から量産まで品質管理を抜本的に見直したほか、品質改革の担当役員を設けるなど体制の見直しを図ってきた。
伊東氏は23日の記者会見で、「研究開発分野の課題を突貫工事で立て直した。国際競争が激化するなか若い人たちのエネルギーでホンダを引っ張る好機だ」と述べ、辞任までに打った布石で今後のホンダは反転攻勢に出ると強調した。
ただ、今回のリコール問題の遠因と指摘されるのが急激な販売拡大戦略だ。伊東氏は平成24年9月、「28年度に世界で600万台以上の販売を目指す」と宣言し、販売台数を足元の1・5倍に増やす考えを示した。
北米依存の収益体質を改めるため新興国市場の開拓に力を入れたほか、「N」シリーズで軽自動車にも注力。ハイブリッド車や燃料電池車などの環境技術を含め開発車種は膨らみ、「開発現場の負荷は相当大きかった」(幹部)とされる。出直しを図るため、伊東氏は今年に入り600万台目標の見直しを表明した。
トヨタ自動車などの自動車大手上位が世界販売1千万台前後の競争を繰り広げるなか、生き残るには規模の追求は避けられない。タカタの欠陥エアバッグ問題など未解決の課題を抱えるなか、再び成長の勢いを取り戻すのは容易ではない。