自動車や電機大手で昨年を大きく上回るベースアップ(ベア)が見込まれる平成27年春闘。政府が目指す「経済の好循環」実現に向けて、雇用の7割の受け皿とされる中小・零細企業の賃上げの動きにも注目が集まっている。トヨタ自動車の下請け企業が多く集まる愛知県西三河地区の現場を訪ねると、余裕がなくても賃上げに踏み切らざるを得ない中小・零細企業の苦渋が浮かび上がってきた。(松岡朋枝)
「もうかったから給料を出すのではなく、将来に期待して出すことにした」
トヨタ系列でエンジン部品などを製造する西尾市の2次下請け企業。男性経営者(48)は2年連続で賃上げに踏み切る理由をこう説明した。
従業員は約50人。売上高はリーマン・ショック前の85%程度で、原材料価格の高騰も利益を圧迫している。それでも、月1%程度の賃上げを決断した。
背中を押したのは、「人材確保の難しさ」だ。大手の業績回復に伴って仕事量が増え、2年ほど前から6人を採用したが、働き手の奪い合いは激しくなる一方。採用した半数が別の企業に移ってしまうという。
刈谷市の部品メーカーも今春、2年連続で賃上げを実施する方針だ。男性経営者は「従業員のモチベーションを維持するため」と話す。だが、業績は上向いているとは言い難く「日々の『カイゼン』で原資をつくるしかない」と話す。
海外販売の好調や円安で業績好調なトヨタなど大手各社は、今春闘で2年連続のベアを実施する見通し。ただ、自動車部品メーカーの6割程度は国内のみで事業を営んでおり、円安の恩恵どころか、むしろ海外部品の調達コストの増加などで負担が積み重なる。
豊田市の研磨会社の経営者は「10年、20年続く仕事が入れば設備や人に投資をしたいのだが」と賃上げには消極的だ。円安で自動車生産が国内回帰の動きを見せ、新しい仕事の依頼も舞い込むが「為替が変動すれば、いつまた海外に移されるか分からない」との不安を拭うことができない。