昨年の春闘では、大手企業は幅広い業種でベアに踏み切ったが、経済産業省の調査では中小企業でベアを実施したのは約2割。賃金の格差は広がった。
自動車総連が今春闘で統一要求に掲げた「月額6千円以上」のベアは、中堅・中小企業の底上げを強く意識。その結果、加盟1060組合の平均要求額は、昨年の約2倍に当たる5904円の高水準となった。
トヨタは好業績の恩恵を中小の取引先にも波及させようと、下請けメーカーに年2回行ってきた値下げ要求を26年度下期と27年度上期の2期連続で見送った。賃上げなどの原資に充ててもらう狙いがある。
賃上げを決めた西尾市の経営者は「年間で100万円程度の値下げになるので、見送りにホッとした」と胸をなで下ろす。ただ、値下げ要求の見送りは他の自動車大手には広がっていないのが現状で、「トヨタだけが声をあげても意味がない」(愛知県の3次下請けの経営者)との声も少なくない。
大手の春闘交渉が大詰めを迎えた12日、菅(すが)義(よし)偉(ひで)官房長官は「昨年12月の政労使会議で、政府として、企業収益が賃金や下請けの設備投資に結びつくようにしてほしいとお願いしている」と強調した。
「小さなネジが1本なくても良い車はできない」(中小企業の組合幹部)といわれる自動車業界。今春闘が、「人への投資」を業界の裾野にまで広めるきっかとなるのか。日本の製造業の競争力強化のカギを握る春闘といえそうだ。