ただ、川崎社長は動じない。神鋼が成長し、世界的にM&A(企業の合併・買収)が激しい鉄鋼業界で生き残るためには生産合理化を進めるしかないと判断。今後の国内需要が減ることを想定し、神鋼の国内での粗鋼生産能力の規模を現在の800万トン規模から700万トン規模へと下げる。神鋼の粗鋼生産は加古川製鉄所(兵庫県加古川市)に集約し、高炉の稼働率の向上と固定費の削減によるコスト低減を図る。
自動車部品などの素材となる線材などの鉄鋼製品の加工生産は神戸製鉄所で続ける。原料は加古川製鉄所から持ってくる予定だ。一方、海外の鉄鋼事業戦略では米国や中国など信頼できるパートナーの粗鋼を活用し、神鋼の技術・ノウハウを生かした鉄鋼製品を供給していく考えだ。
経営安定に「電力」
代わりに神戸第3高炉の跡地利用で浮上したのが、石炭火力発電所の増設だ。今年2月に関西電力が募集していた電源入札で落札者に内定し、計画にゴーサインが出た。神鋼の計画によると、神戸第3高炉の跡地には発電能力65万キロワットの石炭火力発電所2基(計130万キロワット)を33年度、34年度に順次稼働させ、関西電力に売電する計画だ。