◆ICT活用で後れ
「今の日本に何が足りないかといえば、企業におけるICT(情報通信技術)の活用です。ICTに関する日本企業の設備投資は、英米企業の半分程度とされています。これを大きく引き上げることと、顔を突き合わせて遅くまで職場にいなければ仕事の充実感が得られないという働く人たちの古い意識を変えれば、女性や高齢者の働く機会は飛躍的に増えるはずです」
日本企業の経営者も、海外でのM&A(企業の合併・買収)を経験し、遠隔地の外国人を同じように評価しなければならない時代になり、「グローバルビジネスへの改革の痛みを感じているはずだ」という。
「BTジャパンの最終面接もテレビ会議を使いましたが、画面の向こうの役員の言葉が今も忘れられません。私が『日本にはまだ女性の経営者は少ない。私でいいのですか』と尋ねると、面接官は『われわれには次世代のリーダーシップに求められるKPI(目標の達成度合いを計る定量的な指標)があります。あなたがそれを持っていて、たまたま女性だった。何も問題はありません』と。とてもうれしかった」
「短期的には政府方針に沿う形で女性が管理職に抜擢(ばってき)されるケースが出てきます。しかし、次のステップでは女性たちの能力をフェアに評価することが重要になります。欧米の先人たちが築いた透明で公正な評価制度を導入する企業が増えれば、能力のある女性経営者や管理職は自然に増えていくでしょう」(小島清利、山沢義徳)
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【プロフィル】吉田晴乃
よしだ・はるの 1988年慶大文卒。国内外の通信会社で働き、2012年1月に英国の通信大手BTの日本法人、BTジャパン社長に就任。東京都出身。