この考えを実現するため、郵便受け箱で業界大手であるナスタの笹川順平社長に郵便受け箱の差し入れ口を広くしたいことを伝えた。
「要望を聞き、メーカーとして利用者の声を吸い取っていなかったと反省した。再配達で顧客はストレスを感じているはず。現場からも同様の声が挙がっていたが、対応できていなかった。顧客満足度を高めるためにはやるべきと即決しました」と笹川社長は語る。
EC市場が伸びている状況をみれば、商品の受け取り方法を改善していくのは当然の流れでもある。「なぜ、行動に移せなかったのか」ともいう。
開発期間は1年。郵便受け箱全体の寸法を変えずに差し入れ口を広げると強度と盗難の問題が発生する。これをクリアする工夫に時間を要した。とくに盗難への配慮は差し入れ口に細分化した弁状の装置をつけることで解消。まさに郵便受け箱のイノベーションを実現したことになる。
発表後はマンション、アパート向けへの浸透スピードが速く、デベロッパーからの問い合わせも殺到。新築集合住宅の郵便受け箱シェアで「6~7割を目指していける状況だ」という。
「メーカーとして物流の円滑化という社会的インフラにアプローチできた喜びは大きい。開発に携わった社員も意欲的に取り組めた。何よりもお客さまのためになる仕事をさせてもらったことに意義を感じる。今後も世の中に役立つ仕事を精力的に進めていく」と笹川社長は力強く語る。
商品の受け取り方法の改善では、アマゾンも「迅速な配送サービスを提供することは、【地球上でもっともお客さまを大切にすること】というビジョンを達成するためにもっとも重視しているテーマの一つです。今後も引き続きサービスの向上に取り組んでいく」(日南田部長)と物流面での利便性向上への努力は終わらないという。