目指す味のヒントが得られたのは2014年4月。伊藤さんは、コーヒーの最先端の街、米国ポートランドに出張した。サードウエーブ発祥の地といわれ、個性のあるコーヒー店が立ち並ぶ。伊藤さんは約20軒の店を回り、気づいた。「常連のお客さまによく飲まれているコーヒーは、しっかりコーヒー感がありつつ、ずっと飲んでも苦味が後に残らない」。香りや味をしっかりしながら、飲み続けられる味にするための手がかりをつかんだ。米国のドリップコーヒーをライバルとして、コーヒーづくりに挑む心構えができた。
同じ頃、BOSS(ボス)ブランドのマーケティングを担当しているブランド戦略部の鵜飼太祐課長も、缶コーヒーの将来に危機感を持っていた。
サントリーの調査では、これまでの缶コーヒーに求められていたのは、すっきりした飲みやすさだった。それが、カウンターコーヒーなどの飲み方の普及に伴い、缶コーヒーとカウンターコーヒーを併飲する消費者が増え、「缶コーヒーにも淹(い)れたてコーヒー特有のコクを求めるようになった」(鵜飼さん)と分析していた。
こうした消費者の嗜好の変化に気づいた伊藤さんと鵜飼さんらは14年夏以降、ボトル缶コーヒーの新商品に「ブラックコーヒー最高峰のコクを実現しよう」と思い立った。
◆2つの成分に注目
コクと飲みやすさの“融合”という課題を克服するため、伊藤さんらは、淹れたてコーヒーのおいしさの2つの成分に注目した。一つは、コーヒーを飲み終えたカップの底に薄く残る挽(ひ)き豆の細かい粒子。これが、飲む人に繊細さや舌触りを感じさせ、香りや複雑なコクをつくり出す。もう一つは、コーヒーカップの表面に浮かぶオイル成分。コーヒー豆由来で、コーヒーに微妙な粘度を与え、厚みや飲みごたえといったコクをつくる。