クラフトビールは、米市場が先行する。1980年代には全米で100社以下だったのが、2014年には約3400社に。シェアも09年の4.4%から14年には11.0%に伸ばした。「販売価格はバドワイザーなどの2倍前後。それでも飲まれている」と山田氏。急速に伸びたのは、良質なクラフトビールを醸造できる中小メーカーが増えたためだ。
だが、別の理由もある。00年以降、世界ビール大手はM&A(企業の合併・買収)を繰り返し巨大化していく。リーマン・ショック直前にベルギーのインベブが「バドワイザー」の米アンハイザー・ブッシュ(AB)を約5兆円で買収して、ABインベブが誕生したのはその象徴。
ある世界的ビール大手はかつて、創業家が厳しく品質面に目を光らせていた。ところがこの会社は、買収されてしまい、創業家は会社から離れてしまう。
世界の生産委託先に対しても、かつては本国から技術者を派遣し改善を強要することが珍しくはなかった。が、いまはこれをやめている。「創業家が去り、酒造りのこだわりよりも、経営や生産の効率が優先されたため、この会社の品質は落ちた」(日本の大手ビール首脳)。つまり、米市場でのクラフト成長の裏側には「大手の品質劣化がある」(同)と指摘する。
日本の大手4社の品質管理は世界最高水準だ。むしろ、個性的なビールを求める消費者が増えたことが、日本のクラフト市場拡大につながっている。特定少数が好む高付加価値商品が勢いを増す転換点を、クラフトビール人気は示しているのかもしれない。