トヨタ自動車常務役員のジュリー・ハンプ容疑者が逮捕された翌日の19日、豊田章男社長自ら記者会見を開いて謝罪した背景には、ブランドイメージに打撃を与えかねないという危機感があった。今後も「真のグローバル化」を継続する考えを強調した豊田社長だが、改めてリスク管理のあり方が問われている。
「私自身が自分の言葉で説明することが大切だと考え、こうした場を急(きゅう)遽(きょ)設けさせてもらった」
会見の冒頭、豊田社長はこう述べ、理解を求めた。ハンプ容疑者の逮捕は18日午後1時に警察の連絡を受けた役員から報告されたという。業務への影響については「全くないように全員心一つに一丸となってやっていく」と述べた。
迅速な対応の背景には、2009~10年の大量リコール(回収・無償修理)問題の反省がある。
トヨタ側の説明不足が重なり、米国では“トヨタたたき”に発展した。その後、豊田社長が米議会公聴会で自ら先頭に立って安全や品質の確保に向けて取り組む姿勢を示すと、潮目が変わった。
トヨタは、グループ販売が1千万台を超え、世界最大の自動車メーカーになった。人材の多様化を避けることはできない。海外メディアは一様に、ハンプ容疑者をトヨタの「男社会」のイメージを変える人物として報じた。豊田社長は「性別、国籍を問わず、お客さまの笑顔を頂く、もっといい車づくりを推進する体制の変更はいっさい考えていない」と強調した。