空の安全は操縦能力だけじゃない 日航パイロットが実践する“意外”な訓練 (5/5ページ)

2015.7.1 06:00

日本航空の塚本裕司機長(左)と田嶋雅彦機長=羽田空港の日本航空テクニカルセンター

日本航空の塚本裕司機長(左)と田嶋雅彦機長=羽田空港の日本航空テクニカルセンター【拡大】

  • インタビューに笑顔で応じる田嶋雅彦機長(左)と塚本裕司機長=羽田空港の日本航空テクニカルセンター
  • 「言語技術教育」で実際に使用しているイラスト
  • 羽田空港に到着した日航機
  • フライトを終え、駐機場で乗客を降ろす日航機

 言語技術は航空業界だけでなく、一般企業でも十分に生かせるという。

 「ミーティングや会議の時間短縮につながると思います。会議はたくさんある意見をまとめる作業で、全員で判断するのが本筋ですよね。対話スキルを磨いて実践すれば、効率よくいいものを求めることができると思います」(田嶋機長)

 実際に、会議やミーティングが無駄に長い企業は山ほどあるのではないだろうか。言語技術を導入すれば、今よりもっと効率的・効果的に作業を進めることができるだろう。「日航さん、ぜひうちで出前講義をお願いします」なんて会社も出てきそうだ。

 「言語技術」で空の旅をもっと安全に

 最後に今後の目標を聞いた。

 「パイロットとしては、日々安全に運航を続けたいというのは変わらぬところです。教官としては、自分の経験を上手く伝えたい。機長になるために知らなければいけないことを言葉を尽くして伝え、一人でも多く安全を担保できるパイロットを育てたいです。言語技術に関しては、もっと実践できるところに近づきたいですね。また、パイロットだけがやっていればいいというわけではありません。地上スタッフ、整備士、客室乗務員にも教育を展開できればいいなと思っています」(塚本機長)

 言語技術を教える中で一番難しいことは、「いかに汎用性のあるプログラムを少しでもパイロットが使いやすいものにするかです」と両機長は語っていた。日本航空が実践する言語教育はまだ発展している途中で、いまでも最良を模索しながら日々改良を重ねているのだ。その先にあるのはもちろん空の安全。今後、言語技術教育が日本航空のみならず、航空業界全体に浸透して『安全の層』がより厚みを増すことに期待したい。お二人の教育を受けた後輩パイロットが操縦する日航機に乗ることも、個人的には楽しみになってきた。

プロフィール

塚本裕司

・入社年次 1993年

・副操縦士 昇格年次 1997年

・機長昇格年次 2007年

・機種移行歴 ボーイング747 ⇒ボーイング744 ⇒ボーイング777

・現在の役職 ボーイング777機長 兼 運航訓練審査企画部定期訓練室 調査役機長

田嶋雅彦

・入社年次 1996年

・副操縦士 昇格年次 1999年

・機長昇格年次 2010年

・機種移行歴 ボーイング767 ⇒ボーイング777 ⇒ボーイング787

・現在の役職 ボーイング787機長 兼 運航訓練審査企画部定期訓練室 調査役機長

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。