11日に亡くなった任天堂社長の岩田聡氏は、「天才」とも称されるゲーム開発能力と、奇抜なアイデアを次々と打ち出す発想力を兼ね備えた希有(けう)な経営者だった。特に開発を主導した、脳を鍛えるゲーム「脳トレ」や、家庭で手軽にフィットネスができる「Wii(ウィー)フィット」などは、それまでゲームになじみのなかった層にも幅広く浸透。ゲーム人口の拡大に大きく寄与した。
「性能を追い求めるだけでは、ゲームの市場は縮小に向かってしまう。興味のない人に、いかに遊んでもらうかが重要だ」
岩田氏は、経営判断をする際、この理念を常に念頭に置いていた。
任天堂の社長に就任した平成14年当時は、ソニーのプレイステーション陣営に逆転を許す苦しい時期に陥り、再逆転の秘策を迫られていた。
そのため岩田氏がこだわったのがアイデアだった。
「性能を極めたゲーム機を出したい」とする社内の開発者を説得し、16年には2画面とタッチパネル式液晶を搭載した携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」、18年にはリモコン式コントローラーを採用した据え置き型ゲーム機「Wii」と、従来の常識を覆すゲーム機を相次いで発売した。