2016年度の介護福祉士候補生を目指す日本語コースの生徒と高橋彩子教諭(右端)=インドネシア西ジャワ州のチルボン看護大学【拡大】
チルボン看護大出身の1期生の女性、ティタさん(28)は香川県の老人ホームで研修したが、国家試験では2点足りず不合格となり、体調を崩して2カ月間入院し、12年に帰国した。昨年11月、同様に試験に失敗した1期生の仲間7人と「JKK(ジャパン・帰りたい・介護士)」を結成。同じ境遇の2期生も含めてメンバーは20人に増えた。短期滞在ビザで再受験できるが、自力で費用を工面して試験に臨むのは難しい。
家族の問題も大きな障害となっている。候補生の大半は20代で研修期間中に結婚するケースも多い。ただ、夫婦がインドネシア人同士の場合、どちらかが資格を得ても配偶者は就労が制限される在留資格になり、日本で子育てをしながら生活するのは容易ではない。
ティタさんら1期生以降の生徒たちに、チレボン看護大で日本語を教えてきた高橋彩子さん(36)は「家族と別れるのをためらい再受験を諦めたり、合格しても帰国してしまう優秀な生徒は多い」と指摘する。
日本は現在、海外からの「単純労働者」は受け入れていない。だが、政府は人手不足を補おうと、外国人が働きながら日本の技能を学び帰国する「技能実習制度」の受け入れ期間を最長3年から5年に延長し、職種に「介護」も追加する方針だ。
EPAは専門・技術的な分野の外国人労働者に、日本で継続して働いてもらうことを目的にしているが、JKKメンバーは「実習制度も含め、日本で家族一緒に暮らせる方法を考えたい」と、揺れ動く日本の外国人受け入れ政策を見つめている。(西ジャワ州チルボン 吉村英輝)