ケルセチン濃度が高く、おいしい種同士を掛け合わせ、06年に栗山町農家と開発したのが赤タマネギ「さらさらレッド」だ。ファミリーレストランの食材にも使われたが大量生産できないのがネックだった。品種改良の試行錯誤の結果、12年に病気に強く量産と長期保存できる「さらさらゴールド」の開発につなげた。
一方、13年夏、岡本社長とタッグを組み販売や生産を支援し「事業化すれば日本の農業に一石を投じられる」と確信した三井物産北海道支社の浅居誠雄業務室主管は、社内を納得させる稟議(りんぎ)書に頭を抱えていた。立ちはだかるのは、収穫を左右する天候リスクへの社内の反発だ。投資基準をどうクリアし、経営幹部を納得させられるか。農業は息の長い商売だけに短期の投資利回りを営業から求められると厳しい。
だが、社内変革が追い風になった。三井物産は、11年6月に国内事業を推進する専門チームを立ち上げる。東日本大震災の被災地支援だけではなく、事業投資先として日本国内を見直し「地方創生」に貢献したいとの経営トップの考えからだ。そこに「おいしい健康タマネギで農家の収入を増やし、日本の農業を変えたい」との浅居氏の思いが合致し、地方発ビジネスの第1号の予算がついた。
三井物産は鉄鉱石や液化天然ガス(LNG)など資源開発やインフラが得意。一方で食品事業や農業分野は他社に水をあけられ、全社で「食と農業」の成長分野に取り組みたいとの社内事情も幸いした。