「東証ダウ(当時、現日経平均)は大卒初任給の10分の1の水準になったら御の字」。69年に野村証券に入社したHさんは新入社員時代に上司からこう教わったのを忘れない。69年の大卒初任給は3万5000円前後だった。同年の日経平均は安値1733円~高値2358円の間で推移した。大卒初任給の10分の1に及ばなかった。日経平均が89年につけた史上最高値3万8915円は当時の大卒初任給の約4分の1だった。日経平均がバブル崩壊後の09年に付けた安値7054円は当時の大卒初任給の30分の1程度だった。
15年の大卒初任給は21万円弱。直近の2万円台の日経平均は“御の字水準”とも映る。アベノミクスの霊験は薄れた。日経平均がさらに上値を追うには個人消費の拡大に直結する大卒初任給と、一般従業員の平均的給与の引き上げが欠かせないようにも思う。役員報酬の増額が先ではない。
【プロフィル】加藤隆一
かとう・りゅういち 経済ジャーナリスト 早大卒。日本経済新聞記者、日経QUICKニュース編集委員などを経て2010年からフリー。66歳。東京都出身