赤ちゃんのため母親のために、真心込めて対応する「エンゼル110番」のオペレーター【拡大】
■「エンゼル110番」で目指す使命実感
1974年ごろ、ある人の紹介で森永乳業を訪問しました。それより20年前の1955年、森永乳業は粉ミルクの製造過程でヒ素が混入し、飲んだ乳児のうち1万2000人を超える健康被害が出るという社会的に大騒ぎとなった「森永ヒ素ミルク事件」を起こしていました。
◆本気のメッセージを
お会いしたのは、被害者対策窓口の菊池孝生氏でした。菊池氏は「あのような事件を起こしたからこそ、償いの気持ちを込め、二度と同じ過ちをしないように、どこの会社よりも気を引き締めて真剣に製品開発、製造に取り組んでいる」と話すものの、謹慎から以後一切の広報宣伝活動を禁じており、そのメッセージが伝わらないことにじくじたる思いを抱いている様子でした。
ダイヤル・サービスは「赤ちゃん110番」をスタートさせ、お母さんたち数十万人のさまざまな要望や苦情を聞いて、既に熱烈なファンに支えられていましたから、思い切ってこう投げかけてみました。
「赤ちゃんを育てているお母さんたちの生の声を聞き、悩みや質問に答え、森永乳業の本気のメッセージを誠意をもって伝えたらいかがでしょう」
当時は「企業の社会的責任(CSR)」の言葉も概念も、まだ浸透していませんでしたが、そのとき私は、森永乳業はただ謹慎しているだけではなく、消費者と向き合い、積極的に、そして具体的に誠意を示して、信頼関係を回復することこそが社会的責任を果たすことにつながると直感しました。