「日常生活で最も水を消費するのはトイレ。日本人は衛生的な生活に慣れており、災害時であっても、普段家庭で使用しているような水洗トイレを整備する環境づくりが重要」と力を込める。
◆太陽光でくみ上げ
そこで開発したのが「災害用トイレシステム」だ。深さ30メートルの井戸を通じて得た地下水をポンプでくみ上げ、災害用水洗トイレに使うもので、公園や病院、集合住宅などでの設置を目指している。トイレは組み立て式で通常はケースに防災倉庫で保管。災害時にはスパナを使って約10分で設置できる。トイレ全体を使用する際はテントで覆って個室化する。平常時は、下水管につなげた管の上にベンチを置いたり、自転車置き場にしたりすることで用地を有効活用できる。災害用トイレとして政府の助成金対象ともなっている。
手動でも井戸水のくみ上げは可能だが、太陽光発電装置を組み合わせることで得た電力でモーターを回し、ポンプを動かせるのがミソ。普段は公園にある樹木への散水や、小川のせせらぎとして使用することも提案する。井戸水を使用することで水道料金の大幅な削減を図れることも魅力の一つだ。
同システムは、14年2月に茅ケ崎市内の公園に設置されたことを皮切りに、神奈川県内を中心に団地や介護施設などでの採用が相次いでいる。
綾社長は「清潔な地下水が安定的に供給できる日本の国土は井戸の普及にもってこい」と強調、「人口が密集している首都圏などで震災が発生すれば、トイレ不足は深刻。災害用トイレの普及を通じて、社会貢献を果たしたい」と話している。(川上朝栄)
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