そもそも、油圧ダンパーは油の流体抵抗を利用して衝撃や振動を和らげる装置で、自動車や航空機などに使用されている。これを建物の骨組みに設置すれば、地震による建物の揺れを大幅に低減できる。
◆F1のような最高性能
鹿島は他社に先駆けて建物への適用を進め、1995年に日本初の建物制御用油圧ダンパー「HiDAM(ハイダム)」を実用化した。油圧機器メーカーではないゼネコンが、専門外の技術開発を単独で行うことは珍しい。栗野さんは鹿島の制震装置開発の草分け的存在で、油圧機器メーカーでは思いつかないような油圧の使い方を考えた。
2000年には、ハイダムの約2倍の振動エネルギー吸収効率のあるハイダックスを実用化。低層や超高層、新築や既存ビルの制震補強を含め、30棟以上のビルに計2500台以上適用されている。「例えて言えば、F1マシンのような最高性能を追求したもの。これ以上の改良は、やり尽くした感があった」(栗野さん)。その後、コストを抑えた装置を導入するなど、普及に軸足を移していた。
東日本大震災の発生後、長周期地震動が話題となったほか、大きな揺れの体験がなかったビルのオーナーなどから、「揺れの小さな建物」への要望が高まった。そこで、鹿島は12年秋からハイダックスの高性能化に向けた研究開発に着手したのだ。
ダンパーの変形(ストローク)を大きくすれば、建物が揺れるエネルギーを吸収でき、揺れの大きさを低減できる。電気などの動力源を装置に追加すれば容易に変形を大きくできるが、メンテナンスやコスト面などで負担がかかり、顧客から理解は得られにくい。栗野さんは、エネルギー回生システムを応用し、ダンパーの制震効率を高めるアシスト力として利用することを考えた。