11年に一度売り上げが落ちた以外は、毎年売り上げ3割増という驚異的な成長を続け、15年度は1万4000個を販売。注文開始から1カ月で生産予定数が売り切れるほどの人気ぶりで、3年後には2万個を目指している。
◆丁寧さが躍進の秘訣
成長の原動力となったのは、先代から変わらない手作業による丁寧なランドセル作り。「職人たるもの、どんな時代でも良いものをつくらなくてはならない」という先代の言葉を守り、材料は全て国産品を使用、高級紳士かばんと同じという技法で、一つずつ仕上げていく。
6年間安心して使えるよう、各パーツにつなぎ目のない1枚革を使用。角の部分は革がたるんでしまわないよう、放射状に均一にしわを寄せていく「キザミ」と呼ばれる技法を用い、革の裁断面はニス塗りと磨きを繰り返す「コバ塗り」で美しく仕上げている。子供用でも一切手を抜かない堅実なものづくりが、たくさんの人に選ばれる一番の要因となっている。
一方、新しいものを取り入れ、効率化を図ることも欠かさない。「昔ながらのものづくりを守るべき部分と、効率化すべき部分は別」と、日本に1台という裁断機を2500万円かけて導入し、革の裁断を一部自動化。これまで8時間かかっていた100セットの裁断を5時間に短縮した。
また、注文数の増加に対応しようと、今年度から人工皮革の製品もラインアップに追加。9月からは、財布や名刺入れなどの革製小物の販売も予定している。
「どれだけ売り上げが増えても、子供にとっては世界に一つだけのランドセル」と語る山本社長。ものづくりにかける情熱こそ、躍進の秘訣(ひけつ)なのだろう。(桑島浩任)