台湾の場合、企業の重大事項は事前に通告した上で台湾証券取引所の取引をストップさせるため株価に影響はないが、契約締結がいつになるかは投資家の関心事だった。それだけに異例の土曜日の設定に疑問の声もあったが、理由を聞けばどうということはなかった。
当初、シャープや主力取引銀行はそれぞれ取締役会の決議の翌日で、年度末の31日の調印と会見を目指したが、日程は鴻海が「待った」をかけたという。理由について、複数の関係者は「縁起を重視する郭会長の意向だ」と打ち明ける。
つまり、31日は暦の六曜で「赤口(しゃっこう)」にあたり縁起が悪い。4月1日は、うそのニュースが世間を騒がすエープリルフールだから避けた。4月2日は「風水でも良い」となったという。
工場敷地内の稲荷神社に参拝
鴻海は、調印式と共同会見の場所にもこだわった。会場となった堺市堺区の液晶パネル工場は、シャープの経営危機を招いた元凶といわれる一方、鴻海との共同運営で黒字転換したという両社の協業の象徴ともいえる。鴻海主導のシャープ再建を公表するのにこれ以上ふさわしい場所はないというわけだ。