調印式に先立ち、郭会長は91歳になる母親をはじめ家族を会場に案内。鴻海グループナンバー2の戴正呉副総裁も従えて、工場敷地内の稲荷神社に参拝している。一代で売上高規模で15兆円の電子機器受託製造サービス(EMS)世界最大手を築き上げ、ついには創業100年を超える日本の電機大手の一角を傘下に収めた誇らしい姿を家族や側近にみせたかったのかもしれない。
調印式と共同会見で登壇した郭会長は、スーツに紫色のネクタイ姿で、普段よりは控えめな印象。シャープ支援をめぐって日本の官民ファンド、産業革新機構と競り合い、1月末と2月初旬に大阪市阿倍野区のシャープ本社に姿を現したときに身につけていた黄金色の勝負マフラーは封印していた。
郭会長は「これは私のラッキーシンボルだ」と記者団に説明するが、実は三国志で活躍する武将、関羽をまつる「関帝廟(かんていびょう)」から贈られたといわれる。