【高論卓説】リーマン前夜? 頼みの日銀に余力なく “オネダリ相場”に明るい未来はない

2016.5.30 06:29

 東証第1部の1日当たり売買代金が今年の最低記録を更新し、先週末の27日まで7営業日連続で2兆円を下回った。売買代金が4兆円を超える日もあった1~2月の相場乱高下時の“活況”とは様変わりだ。現物株だけではない。デイトレーダーやセミプロの個人投資家の間で人気の「日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(=ETF、通称日経レバ)」の売買代金もピーク時の半分以下に落ち込んだ。日経レバは日経平均株価の2倍の比率で上下動する設計の投信。短期で値ザヤ稼ぎを狙う投資家の格好の投資対象だ。現物株、ETFの売買代金の減少は投資家心理の委縮(いしゅく)を物語っている。

 「笛吹けど踊らず」。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)での安倍首相の一連の発言に対する株式市場の反応は鈍かった。日経平均(終値)は先週末も1万6000円台に貼りついた膠着(こうちゃく)状態から抜け出せなかった。「リーマン・ショック前の状況に似る」との安倍首相の危機感は首脳会議でも浮き上がり、株式市場でも大仰に過ぎると違和感をもって受け止められたからだ。消費増税の延長、第2次大型補正予算編成に向けた理論組み、下地づくりのための発言だったのだろう。「伊勢志摩経済イニシアチブ」に「3本の矢」の文言が盛り込まれたが、これも株式市場にとっては新鮮味を欠いた。

 閑散相場で月次収支が赤字に陥る証券会社が増えたと聞く。証券界は相場が膠着を脱し、反騰するきっかけを切望している。頼みの綱は日銀である。証券各社が発信している投資情報リポートには「日銀の追加金融緩和」の言葉があふれる。マイナス金利のマイナス幅の拡大、国債買い入れ枠の拡大、ETFの買い増し…。株式市場への資金流入増が期待できる策を列挙する。しかし、日銀は矢継ぎ早の金融緩和に疲れ、追加緩和ができる余力は衰えている。

 某証券の部長にいたっては「モリノミクスを」と訴える。金融庁の森信親長官の名前にあやかった命名だ。金融庁の差配で株式の配当・譲渡益課税の軽減税率(10%分)を復活し、相続株式の税率を軽減してほしいとの願望だ。株式相場は株価連動内閣へ甘え、“オネダリ体質”が昂(こう)じている。

 株価形成の3要素は(1)企業価値(利益の極大化)(2)材料・人気(3)需給関係の3つといわれる。上場企業の自助努力による業績の向上がなければ相場の本格的な反騰、上昇は望めない。金融緩和に支えられた相場は脆(もろ)い。金融緩和のタネはいつか尽きる。オネダリ相場に明るい未来は拓けない。

 「独眼流」で知られた故石井久・立花証券元社長・会長の「お別れの会」に参会した。「桐一葉落ちて天下の秋を知る!」。朝鮮戦争の休戦、ソビエト連邦(当時)最高指導者スターリンの死による相場大暴落を予見したコラムの見出しが有名だ。1980年代末にもバブルの崩壊をいち早く予見し、社員に「持ち家を手放したらどうか」と持ちかけた。不動産価格急落の予見は的中した。「株価は予見する」「株価は賢い」「相場は皮肉に動く」などの語録も残る。株価はアベノミクス相場の先行きをどう予見するのだろうか。

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【プロフィル】加藤隆一

 かとう・りゅういち 経済ジャーナリスト 早大卒。日本経済新聞記者、日経QUICKニュース編集委員などを経て2010年からフリー。66歳。東京都出身。

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