中国の旅行会社の認知度ゼロ
中国人旅行客の爆買いの光景の代表格といえば、家電量販店「Laox」や、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」が思い浮かぶが、「Laoxはターゲットが団体客、ドンキは個人客で対照的」と前出の村山氏はいう。
団体客が対象の店はツアースケジュールに来店を組み込んでもらうかわりに、旅行会社やガイドに手数料やキックバックを支払う。ドン・キホーテには、それが難しい事情があった。
「ドン・キホーテは無駄をそぎ落とし、1円でも安く提供するディスカウントストアです。キックバックの原資などない。ビジネスモデルが違うのです」
と話すのは、同社でインバウンド対応のプロジェクト責任者を務め、13年からはノウハウを社外にも広めるため、社内起業してJ.I.S.(ジャパン インバウンド ソリューションズ)を設立した中村好明社長だ。
ドン・キホーテは08年に旅行客からの要望を受け、中国人の大半が決済に使う銀聯カードを導入して以降、全店での免税対応、多言語のHPや店舗POP、訪日外国人客専用コールセンター設置、無料Wi-Fiなど、いち早く受け入れ環境を整備してきた。今や訪日客の来店は急増し、14年のインバウンド売上高は年間400億円と7年間で40倍だ。しかし、7年前に中村氏が責任者に就いたとき、中国の旅行会社における同店の認知度はゼロだったという。現地の旅行博覧会に出展すると、配ったパンフレットはゴミ箱に捨てられ、「悔しい思い」をした。
団体客用キックバック原資もなく、知名度も低い。ゼロから始めて7年、その足跡をたどると、「点」から「面」へ、「地域連携」への戦略の進化が浮かび上がる。