ウーバーが日本で失敗した本当の理由(1) 革新的サービス会社として市民に支持されず (5/5ページ)

 もちろん、日本人が、政府はいつも純粋な動機によって政治を行っていると信じているわけではない。ビールを飲めば、政治家が不正を働いているとか私腹を肥やしているとぼやく声が聞こえてくる。政府を疑う姿勢は、その意味では全世界共通のものであり、そうあるべきだ。しかし、米国の外では、政府よりも信用されていないのが、企業なのだ。

 過大な支持見積もり

 米国人は、企業が消費者の真の擁護者であり、規制は主に政治家やその友人の利益のためにあるものだという企業側の主張をどうも真に受けているようだ。一方、その他の多数の国では、ウーバーが都市に進出し、無益な規制と戦い、人々に低価格なサービスと職をもたらす白馬の騎士だと訴えても、誰も信じる者がいない。そんなばかけた訴えは信じるべきではないとされる。

 米国のシナリオでは、消費者は業界を破壊する革新者の側につくだろうと決めてかかるが、日本ではそれが当たり前に起こることではないのだ。日本だけではない。多くの国では、企業が、労働者保護法、環境法、税法、保険や免許といった要件がすべて変われば操業できるのだと主張すれば、その企業は極めて厳しい疑いの目で見られることになる。海外展開を検討する米国企業のなかにはそれが理解できないところもある。

 ウーバーは、日本市場に進出した際、期待していた一般市民からの支持を過大に見積もってしまった。大きくつまずいてしまったウーバーはチームを再編成し、日本の消費者を味方につけようと、より忍耐強く懐柔的な路線で本格的なライドシェアサービス展開を狙っている。

 ただ、ウーバーにとってはすでに手遅れといえる状況かもしれない。次週は、日本でのつまずきの原因をさらに2つ紹介しよう。〈つづく〉

 文:ティム・ロメロ

 訳:堀まどか

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【プロフィル】ティム・ロメロ

 米国出身。東京に拠点を置き、起業家として活躍。20年以上前に来日し、以来複数の会社を立ち上げ、売却。“Disrupting Japan”(日本をディスラプトする)と題するポッドキャストを主催するほか、起業家のメンター及び投資家としても日本のスタートアップコミュニティーに深く関与する。公式ホームページ=http://www.t3.org、ポッドキャスト=http://www.disruptingjapan.com/