「ずっと言ってますよ、プリウスはカッコ悪い」 豊田章男社長のクルマづくり (2/5ページ)

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 「中央集権や独断スタイルで経営できるのは600万台までだと思います。1000万台の規模になれば、新しい形が求められるのです」

 トヨタ自動車は年間1000万台以上の自動車を生産する大きなメーカーだ。巨大になった組織では、意思決定に必要な部署間調整が社員の処理能力を超え、意思決定の速度を遅らせる。どれくらい深刻かといえば、それは豊田社長の口から「何も決まらない会議」という言葉が出るほどだ。

 こうなると、ゴール日が決まっていることばかりが優先され、「重要だが期日が決まっていないテーマはどんどん後回しになっていく。これはよくない」と話す。あらゆるリソースが、既存のプロジェクトをいかに効率的にするかに集中していく。トヨタという会社はその点については長けているという自覚があるが、一方で本質的な、仕組みややり方の改善によって従来価値を破壊して創造していく力に欠けていた、と分析する。

 豊田社長は、こうした状況を打破するには、トヨタを再び小さくするしかないと考えた。意思決定をスピードアップするためのカンパニー制導入だ。ここで重要なのは、カンパニー分割を「機能軸」ではなく「製品軸」で行うことである。例えば商品企画、設計、生産、販売といった機能軸で分割しても、クルマを作る時、これらの機能は全部必要だから調整は減らない。そのため「車種群を軸にした分割を意図的に行った。それが新しいトヨタの姿」と豊田社長は話す。

「だから私は、打席に出たらまずバットを振れと言うんです」