
NHKの籾井勝人会長(酒巻俊介撮影)【拡大】
就任以来、数々の言動で物議を醸してきたNHKの籾井勝人会長の退任が濃厚となった。籾井氏は再任に意欲をにじませてきたが、初動で生じた経営委員会との溝は埋まらなかった。
一方、NHKは既に800億円近い内部留保があり、受信料収入は2年後にも過去最高の7千億円を突破する見込み。「余ったお金は返す」と訴えた籾井氏ら執行部の値下げ案を見送った経営委に、NHK内では不信感も広がっている。
「『籾井には値下げをさせない』という結論ありきに感じた」。来年度予算編成に伴い、来年秋から受信料を月額50円程度値下げする案が見送られた11月22日の経営委後、幹部の一人はそう漏らした。
NHKは現在の経営計画で、東京・渋谷の放送センター建て替え計画が具体化した際、今後の収支を見直し、「予算・事業計画に反映させる」と規定。建設費は積立金で賄える見通しとなり、東京五輪・パラリンピックが開かれる平成32年までの設備投資額も想定。籾井氏と全役員が「一度、収支均衡のNHKの原点に戻るべきだ」との考えで一致し、値下げを提案した。
だが、経営委では、超高精細な4K・8K放送や放送法でまだ全面解禁されていない番組のネット同時配信を見据え、「見通しが甘い」と反対意見が続出。ある経営委員は「必ずしも収支トントンでなければならないわけではない」と語る。籾井氏と距離を置いていた元経営委員は「受信料収入の3%程度なら余裕で値下げできる。籾井氏に手柄をやりたくなかったのだろう」と推測する。
ただ、執行部が一度値下げを提案し、経営委が見送ったという籾井氏の“置き土産”は残る。NHKが来年度以降、「値下げできたはずの予算」をどう活用するのか、納得感のある説明が求められそうだ。(三品貴志)