
家宅捜索が入った電通本社=7日、東京都港区(伴龍二撮影)【拡大】
『財界人思想全集3』の吉田社長の文献を読むと、「近代広告代理業」を目指して、管理職に「科学的マネージ」を求めていたことがわかる。人を引き込む人間的魅力もあったらしい。
では何が根本的な問題なのか。川人弁護士の言葉にヒントがある。「戦後の長時間労働は高度成長を支えた面があったが、21世紀の長時間労働は日本の経済活動にプラスになりましたか。有害そのものです」
電通について言えば、「鬼十則」がうたう敢闘精神はそれ自体を否定すべきものではない。日本が高度成長のただ中の63年に、吉田社長は亡くなった。そのころ、同社の進撃を支える精神的よりどころとして、時代に合っていたのではないか。
過労自殺を遂げた女性社員が残した声は、不毛の努力を強いられた人間の悲鳴のように思える。「鬼十則」が言う「大きな仕事に取り組め、小さな仕事は己れを小さくする」は正しい。しかしそれだけでは単なる掛け声である。
女性は仕事に意味を見いだせなかったと推測される。働いていたインターネット広告を扱う職場は、広告媒体が大きく変わる最前線である。新しい現実に合わせて、社員が効率的に成果を上げられるビジネスモデルを用意する「科学的マネージ」を伴わなければ、現場の頑張りに過度に頼らざるを得ない。