
日南線を走る観光特急「海幸山幸」(JR九州提供)【拡大】
30年前の国鉄分割民営化の際には、輸送密度4000人未満の区間は鉄道輸送に不向きとされた。JR九州では13年度時点で半数の路線で4000人を割り込む状態で、採算が厳しい路線は今後も増える可能性がある。
17年度予算に1000万円の株式取得費を計上予定の宮崎県えびの市は「取得できる株数では、影響力が小さいだろう。それでも住民の生活に欠かせない吉都線を死守したい」と明かす。同県高原町も17年度予算に計上予定だ。検討中の自治体からも「JR北海道の動きを見れば、人ごとではない」(鹿児島県志布志市)といった声が上がる。
◆活性化へ協調重要
JR九州の青柳俊彦社長は上場後の記者会見で、「廃線を検討している路線はない。維持する努力を続ける」と強調。しかし17年3月のダイヤ改正に合わせ大分-宮崎空港の特急列車の一部で車掌を乗せない「ワンマン運転」の導入方針を示し、合理化に着手している。
JR九州は「事業内容を理解してもらえる方に株主になってもらいたい」(広報)との立場だ。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は「株主として声を上げることは意義がある」と評価。その上で「株式取得を機にJR九州と沿線自治体の話し合いの場が生まれれば、路線維持への大きな前進となる」と述べ、沿線活性化に向けたJRと自治体との協調が重要だと指摘した。