手持ちのリソースで30年ぶりのヒット商品ができた--国内戦略がほぼ空っぽだった日産がもう一度国内回帰するには、非常に有効なきっかけになる。ノートe-POWERにはそういう意義もある。
プリウス・アクアとの違い
“ハイブリッドカー”と聞いて、多くの人がまず頭に描くのはトヨタのプリウスだろう。ノートe-POWERがプリウスと違うのは、タイヤを駆動するのはモーターだけで、エンジンが発電専用となっている点だ。つまり従来のノートで「唯一無二の動力源としてクルマの全ての走りをまかなってきた」HR12型エンジンは、発電動力としてしか使わない。こうした「エンジンは発電、モーターは駆動」という役割分担型ハイブリッドをシリーズ型と呼ぶ。ノートe-POWERは国内初のシリーズ型ハイブリッドとしてデビューした。
余談だが、プリウスのように「エンジンもモーターもタイヤを駆動する」タイプはパラレル型ハイブリッドと呼ぶ。日産は駆動をモーターのみにすることにこだわった。それはモーターがエンジンよりも素養が素直で、扱いやすく運転していて楽しいからだという。このモータードライブの新しい価値提案については後でじっくり深掘りしよう。
ノートe-POWERの商品企画
さて、e-POWERのベースになぜノートが選ばれたのだろうか? つまり「ジュークe-POWER」でも、「マーチe-POWER」でもなく、ノートe-POWERになったのはなぜかを考えてみよう。
マーチ、ノート、キューブ、ジュークという日産の小型車ラインナップの中で、ノートは室内空間の広さを求めるユーザーへの訴求を目的に企画されたクルマだ。4台のキャラクターはそれぞれ異なり、マーチなら廉価を、ノートなら室内空間を、キューブとジュークはそれぞれ方向性は違えどデザイン性の高いキャラクター感を特徴とするスペシャリティカーになっている。つまりe-POWERの母体にノートが選ばれた背景には4人乗車という実用の想定があり、キャラクター性よりも、保守本流の小型車を作ろうという意思があったと考えられる。