
2004年のアテネ五輪で、現地に開設された「iモード」のパビリオン。NTTドコモはiモードの海外展開を目指したが、うまくいかなかった【拡大】
しかし、iモードが先進的だった事例は事欠かない。例えば、アイフォーンが16年秋に国内で導入した電子決済「アップルペイ」。これは、iモードの仕様をつくった現慶大特別招聘(しょうへい)教授の夏野剛(51)らが、従来型の携帯で10年以上前に実現していた「おサイフケータイ」の機能だ。
「グーグル、アップルは、iモードのビジネスモデルを踏襲し、世界に広げてくれた」。夏野の言葉には悔しさでなく、先行モデルをつくった誇りがにじむ。
iモードの人材も、受け継がれた。提供が始まる前後、ドコモで活躍していたのが、流暢(りゅうちょう)な日本語を話す長身のスウェーデン出身の青年だった。
名前はジョン・ラーゲリン(40)。まだ20代だったが、iモードのライセンス付与で海外通信会社の役員と直接交渉していた。上司だった夏野は「語学だけでなく、コミュニケーション能力が抜群だった」という青年はその後会社を移り、移籍先がグーグルに買収された。
「iモード開発部隊にいたのか」。グーグルはその経歴を買い、当時進めていたアンドロイドの開発に参加させた。現在はIT企業の雄、フェイスブック(FB)に移り、スマートフォンでFBを利用するシステムの責任者となっている。「モバイルが弱かったFBが、この3年で絶好調になった」と夏野は指摘する。