
東芝本社が入る浜松町ビルディング=港区芝浦(斎藤浩一撮影)【拡大】
東芝と日立製作所、三菱重工業の3社による原子力発電向け燃料事業の統合が、予定より大幅に遅れることが23日、分かった。早ければ今春にも統合する予定だったが、現時点でめどは立っておらず、少なくとも数カ月は遅れるとみられる。東芝の原発事業を統括する志賀重範会長が、巨額損失の責任を取って15日に辞任し、交渉責任者を欠いているためで、同社の経営混乱が他社との事業再編にも及んだかっこうだ。
3社は原子炉を手がけるほか、関連会社で濃縮ウランから作る燃料棒を束ね、炉心に挿入して使う燃料も製造しており、昨年から燃料事業の統合を模索してきた。具体的には、3社が出資して持ち株会社を設立し、各燃料会社を傘下に置く方向で交渉している。将来的な完全統合も視野に入れているとみられる。
平成23年の東京電力福島第1原発事故以降、大半の原発が停止し、再稼働も進まない中、原発燃料の国内需要は減少に歯止めがかかっていない。このため、燃料各社は赤字が続いており、統合で間接部門をスリム化するなどしてコストを減らし、経営を立て直す考えだ。
ただ、東芝は米原発事業で7千億円超の巨額損失を抱え、経営の立て直しに追われている。また、どの工場を残すかなどの条件面でも調整は難航しているもようだ。統合で基本合意したとしても、公正取引委員会による独占禁止法上の審査が必要で、今年中の統合は難しいとの見方もある。