【高論卓説】米WH破産法申請の狙い 複雑買収で損失隠し? 東芝に責任は (2/3ページ)

東芝本社が入る浜松町ビルディング=東京都港区芝浦(斎藤浩一撮影)
東芝本社が入る浜松町ビルディング=東京都港区芝浦(斎藤浩一撮影)【拡大】

  • 東芝の海外連結子会社、ウェスチングハウス・エレクトリック社が破産法適用を申請。会見冒頭、紹介を受け頭を下げて挨拶する東芝の綱川智社長=3月29日、東京都港区(川口良介撮影)

 東芝側の言い分では買収した会社を精査してみると、巨額の損失があったことが昨年末に分かったので被害を最小限に抑えるためにWHが破産法を申請したかのように聞こえるが、WHとこの会社の関係はそんな単純なものではない。

 東芝がWHを買収したのは06年。このとき東芝は77%、東芝と関係の深いIHIが3%、そして20%の株式を取得したのがS&W親会社で米ゼネコンのショー・グループだった。

 ショー・グループは11年9月に売りたいときに手放せるプットオプション(売る権利)を使って東芝にこの株を全株売却したためWHとは資本関係がなくなった。しかも13年2月にCB&Iに買収されていることから、過去のいきさつが分かりづらくなっているが、ショー・グループはWHのEPC事業(エンジニアリング、調達、建設)に関して独占権を持つ。WHとは表裏一体の会社だ。

 S&Wが担当して巨額損失を出した2つの工事はいずれもショー・グループのコンソーシアム(共同体)が08年に受注した工事だ。いずれも11年3月11日の東日本大震災の影響で着工が大幅に遅れコストがかさんだ。WH、S&Wは共同で12年11月、サザン電力を提訴し、EPC事業の追加費用9.3億ドルを請求した。それだけではない。訴訟にはならなかったが、WHは当時、スキャナ電力とは仕様変更に伴う納期変更と費用負担の、CB&Iとは納期変更追加負担の訴訟リスクを抱え、WHは電力やS&Wと複雑な利害関係を持っていた。

なぜ巨額の偶発債務を抱えていたS&Wを買収?