こうした状況では、1本の転勤辞令が社員の家族に壮絶な負担を強いる恐れがある。高齢化で介護責任を担う人が、転勤に応じられないケースも少なくない。一方で、夫や自身の転勤を理由に正社員の職を諦め、派遣社員やアルバイトで働く女性も多い。
社会構造が変化し、会社が指示する勤務地変更を全ての人が受け入れることは難しい。ただ、同機構が16年に行った調査によると「正社員のほとんどが転勤の可能性がある」とする企業は、まだ33.7%あるという。働く場所の選択における企業の柔軟な対応は、働き方改革における課題の一つだ。
厚生労働省は3月末、会社が転勤のあり方を見直す「ヒントと手法」を公表した。「社員の家庭事情や意向を、面談などで個別に把握することが有効」「育児や介護など理由がある場合は、転勤を免除するといった制度をつくること」などが挙げられている。
国内は少子化で労働人口が年々減少し、都市圏への人口集中と地方の過疎化が進む。全国に拠点を置く企業が、これまでのように転勤に頼って各拠点の人材確保を図るのは容易でない。“脱転勤”は、企業が優れた人材を確保する上でも不可欠だ。