スマホの契約手続きは複雑だ。いくつもの長大な文章に同意しないと次に進めない。筆者も時間が足りず、つい読まずに「同意した」をクリックし契約した。文章をすべて読んで理解してから契約した人は、いないのではないか。その契約にクレジットの部分があると、あとで困る危険性がある。
問題は、携帯などの個別クレジットだけではない。このほかに、毎月一定額を返済するクレジットカードのリボ払いなどの支払いが遅れた人も、17年4月時点で102万人がCICに登録されている。クレジットカードも、規約を理解してから契約する人は少ない。「リボ払いは計画的に」といわれるが、手数料を含めた支払いがいくらで、いつまで続くのか暗算できない筆者が、どう計画的に利用できるのだろうか。
クレジットの支払いが滞ると、その後の暮らしに差し支えが出る。若いときにこれを経験すると、挫折感にもつながりかねない。挫折感は、社会に分断や疎外感をもたらす。私たちの社会を、こんな危険にさらしたくない。まず、後払いに注意を呼びかけたい。商品代金以上の貯金があるなら、分割払いやリボ払いより、どうせ低金利の貯金を下ろしたい。まだ貯金のない若者には、次の給料で買おうと楽しみにした頃の暮らし方を、甘美なノスタルジアとともにお勧めしたい。そして、心ある事業者や団体、行政がともに、クレジットをわかりにくくする広告や勧誘、商慣行をなくす努力をしたい。
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【プロフィル】谷みどり
たに・みどり 東大経卒。1979年通産省(現経済産業省)入省。経産省消費経済部長、官房審議官(消費者政策担当)を経て、2008年7月から現職。62歳。広島県出身。