
池上彰・東京工業大学特命教授(右)。映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』トークイベントの様子【拡大】
また「スターバックス」も似たような失敗をしています。現在は日本国内でも焙煎所つきの店舗がありますが、一時期、工場で一括焙煎したコーヒーを各店舗に配送するようにしていました。すると、店頭からコーヒーのいい香りが消えてしまったのです。
どこのチェーン店でも、店を急拡大する時には効率化を考えますが、「やってはいけない効率化というものがあるのだな」と学ばされます。それは何かといえば、「お客さんに支持されてきた商品」という“本質に関わる部分”です。結局、マクドナルドは粉末のミルクシェイクを採用しなかったのですが、それで正解だったと思います。
共鳴するのは「マクドナルド兄弟」
個人的にとても懐かしかったのは、映画の冒頭部分で「ルート66」が出てきたことです。アメリカのシカゴとサンタモニカを結ぶ幹線道路ですが、私は小学生時代にテレビで放映されたアメリカ映画『ルート66』を観て育ちました。また、同時期にコメディータッチのホームドラマ『パパは何でも知っている』も観ていました。家庭に自家用車が当たり前にあり、家庭料理も豪華で冷蔵庫も大きい--。当時のアメリカは豊かな生活の象徴でした。
後にNHKに入ってアメリカに出張した時も感じましたね。「こんな国と戦争をやっても勝てるはずはなかったな」と。映画を観て、そうした時代性もよみがえってきました。