マツダ車はなぜ「みな同じ」に見えるのか 経営危機から脱した“生存戦略”に理由があった (5/5ページ)

マツダの新世代商品群(3代目アクセラ、3代目アテンザ、4代目デミオ、CX-3、CX-4、CX-5、初代後期からのCX-9、4代目ロードスター)
マツダの新世代商品群(3代目アクセラ、3代目アテンザ、4代目デミオ、CX-3、CX-4、CX-5、初代後期からのCX-9、4代目ロードスター)【拡大】

 トヨタと同じように、クルマ一台ずつの存在感で争ったら、マツダは埋没してしまう。何しろ国内販売台数でも競合車の4分の1、世界全体のトータルで見たら74分の1しかないのだ。めまいがするほどの差である。

 元々決してブランドイメージが高くないマツダが「おっ! マツダも良いな」と言ってもらうためには、一台ずつのデザインを頑張っても勝負にならない。8台のデザインに少ない戦力を分散投資して疲弊した揚げ句「そんなクルマあったっけ?」と言われるのだけは避けなくてはならない。

 8本の矢は折れない

 マツダはフォード傘下を離脱して以降、「ブランド価値経営」を掲げ、全社のリソースを挙げてブランド価値の向上に邁進した。デザインも当然そこに含まれる。だったらマツダ全体のデザインをコモンアーキテクチャー化して、8車種全部でマツダをアピールするしかない。地元安芸の知将、毛利元就ではないが「8本の矢は折れない」という戦術だ。

 こうして出来上がったのが、2012年2月以降発売の新世代商品群に共通する「魂動(こどう)デザイン」だ。前出の前田育男常務によれば、魂動デザインは、最初からデザインのコモンアーキテクチャーを目指したものであり、最高最良のデザインにマツダの全精力を注ぎ、それを8車種全てに適用することを意図していたという。「絶対に埋没しない」--前田常務はそのために魂動デザインと格闘している。

 次回は前田常務の言葉を通して、魂動デザインが出来上がっていくまで、そしてそれによってマツダの何がどう変わったのかについて考えていくつもりだ。

 (池田 直渡)(PRESIDENT Online)

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