EVに残されている「三重苦」 なぜトヨタは本格参入を決断できたのか (1/4ページ)

プラグインハイブリッド車「プリウスPHV」のカットモデル
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 ついにトヨタが電気自動車(EV)への本格参入を発表した。多くのメディアは「これでEVが普及する」と報じたが、EVにはいまだに「三重苦」と呼ばれる課題が残されている。トヨタは「全固体電池」という技術革新や中国市場の動きから、EV本格参入を決断したようだが、果たして成功するのか。自動車ジャーナリストの桃田健史氏が解説する。

 トヨタとマツダがEVを共同開発

 8月4日、トヨタとマツダが資本提携に関する記者会見を開き、そのなかでトヨタの豊田章男社長とマツダの小飼雅道社長は、軽自動車から小型トラックまで使えるEV(電気自動車)プラットフォームを両社が共同で開発すると話した。

 両社は2年前に、包括的な技術連携を目指して協議を始めたことを明らかにし、これまでそれぞれの長所と短所の洗い出しをしてきた。そして今回、資本提携にまで踏み込む形で、次世代車の開発を共同で行うことになったのだ。共同開発はEV単独ではなく、ビックデータなど情報通信とのコネクテッド領域、また最近何かと話題の自動運転とも連携していく。

 この会見を受けて、多くのテレビや新聞、ネット媒体は「EV本格普及が始まる!」と大きく取り上げた。トヨタが本気になったことで、EVが一気に売れるのではないかと予想しているようだ。

 ただし、こうした報道の多くが「EVありき」という偏った見方をしているように、筆者には思える。約1時間にわたる同会見の動画はトヨタのホームページで公開されているが(http://newsroom.toyota.co.jp/jp/detail/18012121/)、トヨタとマツダそれぞれの説明をしっかり聞けば、両社にとってEVとはどのようなものなのか。それについて同社はこれからどのように挑戦していくのかが分かる。

 本記事ではそれを踏まえた上で、EVの本格的な普及が、本当に近年中に始まるのかについて考えてみたい。

EVの三重苦とは何か