
トヨタ自動車がスポーツカー新ブランド「GR」を発表。デモ走行に臨む豊田章男社長=9月19日、東京都江東区(寺河内美奈撮影)【拡大】
レース参戦には年間数億円~数百億円の費用がかかるとされるが、豊田社長はあきらめなかった。07年からは独ニュルブルクリンク24時間耐久レースにGRの名称で参戦。12年にはWECに参戦し、今年復帰したWRCでは2戦目で初優勝の快挙を果たした。
GRの発表イベントで、豊田社長は「86(ハチロク)」をベースにしたラリー車「モリゾウ 86」を自らデモ運転。なめらかなステアリングによるスピンターンを披露した。
「優等生」のイメージを払拭するかのような「やんちゃぶり」を見せつけたが、自動車業界の競争環境は厳しい。
米テスラなど電気自動車(EV)メーカーの台頭のほか、カーシェアリングサービスの普及、生活スタイルや娯楽の多様化による「クルマ離れ」が進むなど逆風が強まっている。
こうした状況では、購買意欲を刺激するような個性的なクルマづくりがおのずと求められる。スポーツカーを活用したブランド戦略はその好例といえそうだ。
ライバルの日産自動車も、量販車をレース仕様にした「NISMO(ニスモ)」ブランドの車種を22年をめどに2倍以上にする計画を掲げる。独アウディも「Audi Sport(アウディ スポーツ)」の販売網を日本で展開する。
「80年の歴史を迎えるトヨタが改めて面白いクルマを造れることを示したい」と豊田社長。新たな「かっこいいクルマ」の歴史を切り開けるか。(宇野貴文)