自動車の将来は経済・産業問題全体の観点から極めて重要だ。同時にエネルギー問題にも重要な意味を持つ。それは自動車用石油需要の伸びが世界の石油需要の将来を左右する要因であり従来は内燃機関に本格的に挑戦する代替・競合技術・エネルギーの存在が認められてこなかったためである。もし電気自動車などが予想を超え急速に普及すれば世界の石油需要の将来を変え、国際エネルギー市場を揺り動かす「ゲームチェンジャー」になり得る。
当研究所の分析では、世界の石油需要は通常の前提では50年まで増加する。一方、電気自動車・燃料電池車などのゼロエミッション車の世界新車販売シェアが今後急拡大し50年に100%になるとの思い切った前提をおくと、世界の石油需要は30年頃にピークを打ち50年には現状並みまで低下する。
世界の石油需要は増加を続ける、というのが長期予測における一種のコンセンサスである。需要増加を満たすため徐々に高コスト石油が必要になる、との考えに基づき、長期的に原油価格は上昇するとの見方も共通している。
石油需要ピークなら多大な影響
仮に石油需要ピークとなれば、上記の前提が崩れ、原油価格は上昇せず、長期的に50~60ドルとなると当研究所は考えた。その場合、需要(販売)低下と油価下落で、50年の中東産油国の石油輸出は基準ケースより1.6兆ドル減、国内総生産(GDP)も13%低下する。需要ピークの可能性を念頭におけば、中東産油国にとって経済構造の多様化・高度化による石油依存体質からの脱却は一層重要性を増す。