こいのぼり、「ミトコンドリア病」治療薬開発 日本初、患者家族中心に創薬事業 (2/2ページ)

(右から)こいのぼり代表の菅沼正司・菅沼医院院長、同理事で7SP代表の篠原智昭氏、7SPに参加する京都府立医科大大学院の五條理志教授
(右から)こいのぼり代表の菅沼正司・菅沼医院院長、同理事で7SP代表の篠原智昭氏、7SPに参加する京都府立医科大大学院の五條理志教授【拡大】

 研究の過程では、ミトコンドリア機能異常が糖尿病や免疫疾患、さらには老化を促進する可能性がみえているという。研究に参加する京都府立医科大学大学院の五條理志教授は「ミトコンドリアはエネルギー産生を中心に研究されてきたが、免疫にも大きくかかわっている。一連の研究はその実態を明らかにしていくことでもあり、関連する疾病の治療にも役立つ可能性がある」という。7SPでは、共同研究の成果として2018年頃の特許取得を目指す考えだ。

 特許が確立すれば医薬品メーカーとの提携や多方面からの出資を募るなどして資金を確保。ミトコンドリア病を対象にした臨床試験を実施し、まずは日本で医薬品としての承認取得を進める。また、ミトコンドリア病以外の疾患を対象にした開発権は、提携する医薬品メーカーに導出するとしている。

 娘の命助けたい

 こいのぼりでは、この7SPを前進させるために寄付を通じた資金援助を募っている。現時点では株式会社のように出資を受けることが難しいためだが、医薬品メーカーだけでなく、ヘルスケア関連企業などからミトコンドリアの技術展開を目指した資金協力もあり得ると考えられる。この取り組みは、大きな可能性を秘めている。

 このスキームは、難病患者の家族が中心となって創薬事業に乗り出すという日本では初めての試みであり、希少な難病に関係する医療・医薬の世界に一石を投じている。自分の娘の命を何とか助けたいという父親の一念から始まった7SPのミトコンドリア病根本治療への挑戦は、ハリソン・フォードが総指揮をとった米映画「小さな命が呼ぶとき」に描かれた難病であるポンペ病治療薬開発を思い起こさせる。次の新たな奇跡が、日本で動き出している。

【法人概要】こいのぼり

 ▽所在地=愛知県豊田市高橋町1-61(koinobori-mito.jp)

 ▽設立=2013年1月17日

 ▽事業内容=ミトコンドリア病の治療法確立、有望な開発候補化合物、治療法の探索、臨床開発業務の支援